Liying Huang
コウ レイエイ
Statement / Profile
彼のこと、今でも知らない
中国の一人っ子政策時代、母は私より先にもう一人子供を妊娠していた。でも、思いがけず死産となってしまった。地元の⺠間伝承によると、胎内で死んだ子は仏の眷属(使者や弟子のような存在)で、前世の因果から一時的な縁で両親と繋がっていたという。その因果を断ち切るために、その子の霊魂が母胎に入って、カルマ(借り)を返す。その後、仏様の側に戻る。私の母親はそれを信じている。仏様に兄の面倒をよく見てくれるようにお願いし、兄が私を順調に成長させてくれるようにと、母は毎年霊山に登り、お線香をあげて祈る。
子供の頃、兄弟が存在すると想像したことがあったが、今考えると、彼が無事に生まれたら、私はこの世にはいないのだろう。一方で、時間の流れとともに、私と両親が入れ替わったようだ。私が子供の頃は家で親の帰りを待っていたが、今では親が私の帰りを待ち続けている。
2016年からの二人っ子政策、さらに2021年、中国政府は3人目の出産を認め、一人っ子家庭は、滔滔と流れる長江に沈んでしまったようである。皮肉なことに、一人っ子政策の時期の親達は子供がたくさん欲しかったのに、今ではほとんど産めない状況で、産める若者たちは逆に産みたくないのである。そんな反転した時代に、私は物理的には存在しないが精神的に存在する兄の痕跡を描き出し、河に沈んだ「一人っ子世代」を掘り起こすように、過去と現在、記憶とイメージの隙間から、「不在」を写し出すことを探求する。個人の記憶から社会的記録へ広げ、社会的·制度的環境を再考する。
コウ レイエイ Liying Huang
- 2022年
- 東京工芸大学写真学科 卒業
- 2024年
- 武蔵野美術大学映像·写真コース 修了
- 受賞
- 2020年
- 写真学科スペシャル特別審査員賞 伊藤ヒロコ賞
- 2022年
- フォックスタルボット賞 佳作
- 2023年
- APAアワード2024 文部科学大臣賞
- 2024年
- 武蔵野美術大学修了制作展 優秀賞
- グループ展
- 2020年
- 「写真学科スペシャル アワード2020」作品展 東京・銀座 ソニーイメージングギャラリー
- 2021年
- 「第26回jps展」ヤングアイ 東京 東京写真美術館
- 2022年
- 「東京工芸大学卒業展」 東京工芸大学中野キャンパス
- 2022年
- 「フォックスタルボット賞 受賞写真展」 写大ギャラリー
- 2022年
- 武蔵野美術大学小林ゼミ展 ルデコギャラリー
- 2023年
- T3 STUDENT GALLERY 2023 JR東京駅
- 2024年
- 「武蔵野美術大学 修了制作展」 武蔵野美術大学鷹の台キャンパス
- 2024年
- 「APA AWARD 2024公募展」 東京都写真美術館
- 2024年
- 「武蔵野美術大学 卒業修了優秀作品展」 武蔵野美術大学美術館
- 個展
- 2024年
- 黄麗穎写真展 「彼のこと、今でも知らない」 ニコンサロン新宿
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