Kento Terada

寺田 健人

Statement / Profile

聞こえないように、見えないように
The Gunshot Still Echoes

戦後80年を迎えたいまも、沖縄の風景には戦争の痕跡が沈黙のまま刻まれている。

街の壁に残された弾痕や、静かに佇む戦跡-それらは風雨にさらされながらも消えることなく、日常の景色の一部として存在し続けている。私はその沈黙に触れるようにして作品をつくってきた。

弾痕を写し取り、その傷口を金継ぎのように金色で埋めるリトグラフのシリーズでは、米軍の訓練で使用された薬莢を粉にして刷り込んでいる。武器として放たれた金属を版の中に沈め直すこと。それは暴力の痕跡を消すのではなく、むしろ浮かび上がらせ、別の輝きを帯びた記憶として差し出す行為である。

かつて人びとが戦後の困窮のなかで残された物資を暮らしの道具へと作り替えたように、私は薬莢をはじめ、払い下げられた素材を「傷を記憶する素材」として扱っている。

薬莢の金色の輝きは、一見すると平和を示すようにも見える。けれど、それをそう呼んでよいのか、私は迷う。八十年という時間が、果たして沈黙を癒やしたのだろうか。見えない声、聞かれない声はいまも風景の奥に潜み、銃声はなおこだまし続けている。

芸術の役割は、過去を記録し直すことではない。記録には残らなかった感情や、語られなかった記憶の痕跡に寄り添い、いまを生きる身体の感覚として再び差し出すことにある。それが、祈りが形骸化せずに息づき続けるための、ささやかな手立てであると信じている。

寺田 健人 Kento Terada

1991年沖縄県生まれ。写真という制度と身体の関係性を手がかりに、セクシュアリティやジェンダー、歴史認識に潜む規範的な視線を撹乱する。映像や立体をインスタレーションの中で併用し、戦争の記憶や社会構造の痕跡を帯びた素材を扱いながら、可視化されない存在や語られなかった親密性を浮かび上がらせる。写真に刻まれる「不在」の構造を批評的に扱い、個人の物語と社会的・政治的文脈が交差する地点を提示している。主な展示に、日本の新進作家vol.22 遠い窓へ@東京都写真美術館(2025)、あらがう@福岡市立美術館(2024)、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2023『態度が〈写真〉になるならば』@東京建物八重洲ビル(2023)

Image 1-17 © Kento Terada/Courtesy of Yumiko Chiba Associates
Image 18,19 © Kento Terada/Courtesy of Yumiko Chiba Associates/Dai Takano

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